医師、看護師、患者と様々な立場の人との関わりが多い看護師のお仕事。看護師の業務内容は多岐にわたり、とても過酷なものです。
新人看護師は「慣れない仕事がしんどい」と仕事の辛さに追い詰められ、ベテランの看護師であれば「家庭との両立がしんどい」「仕事をする体力がもたない」といった、私生活を重視したい気持ちや体力的な側面が気になる方も多いのではないでしょうか。
そこで今回は、看護師がやめたいと思う理由を解説していきます。
1.業務内容が多い
業務内容といえど、看護師の業務形態はかなり幅広くあります。病院内であれば病棟勤務、外来勤務。クリニック、訪問介護なども考えられます。保健師助産師の資格もお持ちの方であれば、なおさらでしょう。
夜勤の頻度が高い職場、患者のADLが低くケア度が高い職場、緊急性の高い患者の受け入れる職場など、それぞれ職場によりいろいろな特色があります。どれも違った忙しさやしんどさや辛さがあると思います。
ケア度が高いと体力的にもきついですし。夜勤回数が多いと生活リズムが崩れる可能性が大いにあります。また、職場によっては患者の死に直面することもあり、精神的にダメージを負うこともあるでしょう。
不測の事態が起こったとしても、通常の業務量は変わらず、追加の業務は増える一方、それらを全てやりきらないといけません。
近年であれば、2019年よりCOVID-19が大流行した影響で辛い思いをした看護師は少なくありません。臨床では、通常業務のほか、感染対策+体調不良によるスタッフの人員不足+感染症罹患により高くなる患者の重症度+マニュアルにない看護ケアへの順応など。これらにその都度対応する必要もあり、非常に現場スタッフは混乱したことかと思います。
世間の情勢にも影響を受けやすく、多くの肉体的に、精神的に消耗しやすい辛い環境といえます。
2.人手不足で労働環境が厳しい
看護師の労働環境に不満を持っている方も多いと思います。慢性的な人手不足で、看護師一人一人の負担が大きくなっています。国家資格のため、再就職は他の職種よりもしやすいこともあり、離職率もかなり高いです。看護師免許を所持しているが、看護師として働く選択肢を選ばなかった潜在看護師も多くいます。
それほどまでに不満感を抱きやすい労働環境であるため人手が足りず、苦労する方も多いと思います。看護師の国家試験の特性上、9割を受からせるような仕様となっており、毎年必ず一定の人数が看護師となります。
看護師には限らないのですが、後期高齢化社会にともない日本の労働力は年々減少しています。それに伴い、年々患者のケア度も上がっています。それでもなお人では足りていないと現場スタッフが感じるだけ退職者が多いということです。
3.仕事内容に対して給料が安い
患者の命を守るお仕事でもあり、責任感をともなうものだと思います。仕事のきつさに比べて、お給料が安いと感じる方も多いでしょう。
給料が少ないと言ってもいろいろなものがあると思いますが、基本給が少なければボーナスの低さに直結しますし、夜勤手当や階級による手当てが低い場合もあります。「仕事が増え責任は増すものの給料は増えない」と、不満を持ち、仕事をやめたいと考える人も増えます。
大きい病院であれば労働環境やマニュアルの整備がされている場合が多いかと思いますが。個人規模の経営となる病院や規模が小さい病院では、夜勤や残業に手当てがつかなかったりと労働環境そのものが整っていない職場もあります。
4.プレッシャーや責任に耐えられない
一刻を争う医療の現場だからこそ、プレッシャーに悩む方も多くいます。
看護学生のときから実習の現場ではなかった責任感が、たとえ新人の看護師であったとしても、圧し掛かるかと思います。些細なミスであれど責任の所在を確かめたら、自分が原因だった、なんてことも人によっては思い当たることもあるのではないでしょうか。新人であれば、先輩も一緒になって怒られることもあったかと思います。
上司や先輩、患者などに強く叱られたことが印象に残り、それがきっかけで自信を失う看護師もいます。
後輩を指導する立場になれば、自分の業務だけでなく、後輩の業務に気を配りながら、フォローアップをする必要があります。新人と他スタッフの橋渡し的な役割として後輩のために動くことが増えるでしょう。新人にとって風通しのよい職場にしたい、患者の安全やケアを充実させたいといった、自身の患者との関わり以外で気にかける点が増えるため、後輩のミスをフォローアップできなかった自分を悔いることもあります。
新人や教育の場以外でも、患者の急変時、どのように対応したらいいのかわからず、自信を失うことも多いです。急変時は、はじめのうちは誰しも動けず、なにもできなかったことに不甲斐なさを感じるスタッフも多くいます。スタッフ総出で仕事を回しても対応が間に合わないこともあります。
体験談として、急変の対応にいち早く気が付いたスタッフが、急変対応が終わってナースステーションに戻ってすぐ泣き出してしまうこともありました。昨日まで普通に話していた相手がいなくなることがそれなりにある環境ですので、責任の重さを感じる人は多いかと思います。
5.上司や先輩・後輩との人間関係
女性が多く働く看護師業界で特にトラブルのもととなりやすいのが、職場のスタッフ同士の人間関係です。
男性が少ないため、女性特有の人間関係の悪さに息苦しさを感じる人も少なくありません。
いじめやいやがらせ、パワハラに悩む人もいます。噂や陰口も日常ですから、話を聞いてみたら、人の好き嫌いが流れてくるなんてことも多いです。最近ではSNS上に職場の愚痴を書き込むことでストレスを発散するスタッフもいたりします。
また、ベテランの看護師や役職者となってくると、特定の職場に長期間席をおいていることが多いです。そのため、その職場特有のやり方に慣れていたことが原因で関わりかたに悩む人もいます。直属の看護師の上司とそりが合わず職場を離れるスタッフも多くいます。上司のやり方が色濃く出やすいため、上司が変わって一気に仕事がしにくくなった、といった経験もあります。
6.医師や多職種との人間関係
看護師の他、関わりの多い職種といえば、医師です。看護師は医療の補助のため、医師の指示のもと動くことが大切な仕事の一つです。
医師との連携がうまくいかず、仕事が思うように進まないことがストレスになりやすいです。
立場上、指示が入ったら、従わないといけないため、退勤ぎりぎりに医師が指示をいれたため残業をせざるを得ないなんてことが往々にしてあります。理不尽であったとしても患者のためを思うと言い返せないこともつらいところです。
医師だけでなくリハビリスタッフやMSW、ケアサポーターとの関わりも大切です。看護ケアとリハビリとの時間がかさなってしまってお互い譲り合ったり、退院支援を進めるのに、MSWとのやりとりによって退院までのスムーズさも変わっていきます。ケアサポーターには看護師の業務の手の行き届かない所をサポートしてくれる役割を担っているため、良好な関係は築くに越したことはありません。こまごまとした多職種との関わりが苦手なスタッフもいることでしょう。苦手なスタッフとの少しずつの負担が積み重なることが「やめたい」という気持ちを強めることがあります。
7.患者・家族との人間関係
看護師は患者やその家族と最もコミュニケーションをとる存在といっても過言ではありません。一人の命を扱う現場であり、患者さんは普段とは違う精神状態にあります。そのため、患者や家族からクレームを言われたり、心無い言葉を浴びせられることもあります。
患者・家族との人間関係は、理不尽が起こったとしても看護師は耐えないといけない風潮にあります。女性スタッフが多い環境ですから、セクハラをされることも多くあります。
「患者は病気があるから」という大義名分がありますから、暴言や暴力を受けたのにも関わらず、上司や先輩に報告したらなぜか看護師がレポート書かされるなんて経験をした方もいるかと思います。
患者・家族との関係性がうまく築けず、医療者との意見が食い違ってしまうことや、患者や家族間での意見が統一されないことで医療者が混乱し、板挟みになるケースもあります。
8.家庭の環境により仕事を継続することが難しい
家庭環境や今後の家族計画のため、仕事の継続を断念するスタッフもいます。結婚、出産、育児、介護。育休や産休を利用し看護師の職を続けるスタッフもいますが、キャリアアップを考えるよりも自身のプライベートが忙しくなってくることも多いでしょう。
引っ越しがあれば、通勤そのものが困難になる方もいます。
駅から遠い職場であったり、電車の乗り継ぎが必要になったりすることもあります。プライベートの環境が大きく変化する場合、再就職をしやすい職種のため転職が選択肢のひとつとしてある方も多いかと思います。
9.理想と現実に打ちひしがれる
看護学生時代、想像していた看護師像と、実際の看護師の業務にギャップを感じる方も少なくありません。
学生時代は、患者ひとりひとりに丁寧にケアを行っていましたが、実際には一対多のケアを行うとなると、イメージしていた理想とのギャップを感じる方は多いです。
業務に慣れるのに手いっぱいで本来やりたいと思っていたことができず、フラストレーションを感じ、やめたくなる方もいます。
10.休暇が取れない・取りづらい
看護師はシフト制でなかなか休暇がとりにくい環境で、新人のうちは特に希望休を提出しにくい環境にあります。正社員であればなおさら、連休は数か月前に希望を出しておかないと休めないこともざらにあります。
調整がしにくい環境なのでシフト変更をお願いしたいときも、変更できるスタッフはいないか探したりする必要があったり、休暇を取りにくい環境にあります。
11.看護師の経験からキャリアアップややりたい看護を見つけることができた
看護師として患者さんとかかわるうちに、今の職場にない診療科を志したり、今後のキャリアアップを検討し、やりたいことが見つかることがあります。今の現場では経験できないことをしたいと、前向きな気持ちで退職をするスタッフもいます。
その場合にも、ぜひ目標にあった仕事へ挑戦しましょう。
まとめ
看護師を辞めたい理由についてまとめさせていただきました。いまの職場がしんどいと思うかたはいくつ当てはまりましたでしょうか。参考になったら幸いです。
他にも仕事の辞め方、辞めるかどうかの判断基準の記事もありますので、そちらも参考にしていただけたら幸いです。
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